コア事業をサポートしながらブランドの価値を高める、ダンロップのライセンスビジネス。

ライセンス業界:インタビュー

小村幸子 氏 住友ゴム工業株式会社 ライセンスビジネス部 課長

ライセンス業界で活躍する方の職業観や、業界に対する思いについてお話を伺う、インタビューシリーズです。

今回は、ダンロップのブランドホルダーとして、全世界のライセンスビジネスを統括する部署で活躍されている、住友ゴム工業株式会社の小村幸子氏にお話を伺いました。

 

-ライセンスの業界に入られたきっかけを教えて下さい。

私は、タイヤ事業やスポーツ事業、産業品事業を行っている住友ゴム工業株式会社に新卒で就職しました。そこで、最初に配属されたがスポーツの部門であり、担当をした仕事の一つがライセンスビジネスであったということがきっかけです。

ライセンスビジネスがしたくて、住友ゴムに入社したわけではなく、入社して初めて、ライセンスビジネスをしている会社だということを知りました。

 

-住友ゴムを目指された理由は、やはりブランドに関するお仕事を希望されたからでしょうか?それともタイヤに興味があったのですか?

そうですね、私は学生の頃は車の運転や車での移動が好きで、足元を支えているタイヤという商品にだけでなく、そのブランドにも興味がありました。よって、愛着のあるダンロップというブランドをもっと高めていけるような仕事に携わりたいと考えていました。

余談にはなりますが、もう一つの理由としては、本社ビルが自宅から近かったということも挙げられます。

住友ゴムの本社ビルは、幹線道路が合流する場所にあり、車で良く前を通っていました。独特の形でとても目立っていたのですが、当時特に何のビルかは意識はしておらず、就職のための面接の際に、「このビルだ!」と驚いたのと同時に愛着を感じたのを覚えています。

今もオフィスから大学が遠目に見えており、いつも懐かしく感じています。

 

-ライセンスビジネスは、ブランドに密接に関係する仕事なので、思ったお仕事に近かったのではないでしょうか?

はい、日々「ブランド」に向き合って仕事をすることができていると感じています。

私達の会社はメーカーですので、自前でお客様に商品をお届けできるカテゴリーが決まっており、また、自社の製品を考えると、なかなか企画から、実際販売されるところまで全てに係わることができる業務というのは社内にあまりないように感じます。

その点、ライセンスビジネスに関しては、ブランドにとって「あったらいいな」と思う商品に対し、その分野が得意な専門メーカーさんに、ブランドをお貸し、商品化していただくので、アプルーバル業務を通じて商品の企画プロセスから、お客様に届くまで、場合によってはお客様対応までと一連の流れに係ることができます。

私のかかわった商品を身に着けたお客様を見たとき、お客様から愛用していただいているという声を聴いたときなど、 嬉しい瞬間がたくさんあります。

 

-入社されてからはずっと同じ部署で同じお仕事を担当されているのでしょうか?

ライセンスビジネスを専属で行うようになったのは、2018年からですが、入社してから、2年間を除きずっとライセンスビジネスを担当してきました、ライセンスビジネスを専属で行うまでは兼務で、スポーツビジネスに於ける市場調査、ブランド管理等の業務も行いました。2年間、ライセンスビジネスを完全に離れていた間は、ゴルフの海外ビジネスに携わっていました。

 

-ゴルフの海外ビジネスとは、具体的にはどのようなお仕事でしょうか?

中国におけるゴルフの販売会社立ち上げのサポートや、販売会社の管理です。中国、台湾、韓国を主に担当していました。その頃は毎月のように海外出張に出て、現地の商習慣や、人、流通形態などに触れていました。その経験が、現在のアジアでのライセンスビジネスにも生きていると思います。

 

-その後、商標権の買収や社名変更など大きな変化がありましたよね。

そうなんです。2017年に当時の住友ゴムの子会社であったダンロップスポーツインターナショナルが全世界のダンロップブランドの商標権を買収したことは、とても大きな変化でした。

我々はライセンシーの皆様と協力して、お客様により良い価値を提供し続けることに重きをおいた活動をしてきているので、長いところでは40年近くと、ライセンシーの皆様とは長くパートナー関係を築いてきています。よって、新しくライセンス契約を行うことはあっても年に数件だけでした。

 しかし、その買収により、期限までに短期間で100社ほどのライセンシーを一度に引き継がなければならないという状況となりました。

引き継いだライセンシーの皆様にご迷惑をかけないように、書面上の手続きを抜け漏れなく行うだけではなく、ロイヤリティレポートなど実務面での運用の仕組みを理解し、人や組織も含めてできる大勢を整えるというというのは今思い出してもとても大変なことでしたね。

 現在は、ライセンシーの皆様が時差によるストレスがないよう、イギリスにも事務所を構え、欧米のライセンシーはイギリスで対応、日本を含めたアジアのライセンシーは日本で対応する体制をとっています。

体制ができたら、次は全てのライセンシーと面談を行うことを行いました。

アメリカについては、ラスベガスで開催されたライセンシングエキスポを利用しました。会期中に会場に来てもらい、個別に面談を行いました。アルゼンチンのライセンシーなど、物理的になかなか行くことができないライセンシーにも直接会い、ライセンシー自身を知ることができたこと、また、我々のブランドへの思いを面と向かって伝えることができたので、良かったと思います。

ダンロップの商標権を買収した理由は、ダンロップのブランド価値を世界的に高めていくことを目指していきたいと考えているからです。

タイヤはもちろんのことですが、テニスでもオーストラリアオープンの公式ボールサプライヤーに就任するなど、スポーツ分野でグローバルに積極的な投資を開始しました。

そうした中、我々に課せられているのは、住友ゴムのコア事業である、タイヤ、スポーツ、産業品をサポートするようなライセンスビジネスを展開し、ブランドの価値を高めていく活動です。

例えばゴルフ事業で我々が自前で製造販売していないゴルフウェアをライセンスするなど、その分野のブランドとして魅力を高めるための活動です。

ダンロップブランドの引き継いだライセンスビジネスに関しても、商材がコア事業からの拡張となっており、ブランドにとってその商材があることが望ましいか、商品がブランドに見合う品質かのチェックだけでなく、ライセンシーがブランドを高めていきたいという我々の 意志に共感し、パートナーとしてブランドを高めてくれるかといった目線で絞り込みを行ってきました。再構築は順調に進んでいると思います。

2018年には、スポーツ事業を行ってきたダンロップスポーツと、ダンロップブランド買収の受け皿となっていたダンロップインターナショナルが住友ゴムに吸収合併され、ライセンスビジネス部が、住友ゴムに新たに創設されました。この組織改変により、これまでより一層ライセンスビジネスにとりくめる基盤が整いました。

 

-それはこれからますます楽しみですね。世界中のダンロップブランドを、貴社が一括で管理されるわけですね。

タイヤにおいては、全てというわけではありませんが、スポーツの分野に関しては、世界中で権利を使うことができるようになりました。

我々のライセンスビジネスも、これまで当社が商標を保有していた範囲、日本、台湾、韓国で主にスポーツ分野でのみライセンスビジネスを行ってきましたが、これからは世界中で活動をすることができます。

日本においても、以前は商材によっては前の権利者がライセンスビジネスを行っており、お客様からお問い合わせをいただいても、何もお役に立てないことで悔しい思いをしたことがありましたが、今は全て把握できているので心強いです。

 

-とても大きなビジネスになっていますね。この体制をベースに、次はどのようにライセンスビジネスを舵取りされていこうとお考えですか?

ブランドの存在意義をしっかり意識し、それに基づき事業を行うことで、これからもみなさまにブランドや商品を支持していただけるようにしていきたいです。

日本での我々のライセンスビジネスの歴史は長く、1984年からスポーツカジュアルのアパレル、シューズを中心にスタートしました。DUNLOP MOTORSPORTブランドでお客様に長くご愛顧いただいているのですが、徐々にブランドの提供したい価値の発信が希薄化してきたという課題を感じていました。

よって、しっかりとお客様にブランドの存在意義や目的をしっかりと示したうえで、価値を提供していきたいという思いで、日本において新しいブランドを立ち上げることにいたしました。DUNLOP REFINEDというブランドです。

 

DUNLOP REFINED

ブランドの提供したい価値

(1)DUNLOP REFINED ブランドの意味

上質な、洗練されている

 

(2)DUNLOP REFINED ブランドのパーパス(存在意義)

最高の快適さを約束する機能によって、

年齢に縛られず、本質を大切にする人たちの

気持ちを前向きにする、上質でシンプルな装いを提供します

 

今までも、商品に関しては、ライセンシーの皆様の努力により、とてもいいものをお客様に提供することができてきたと思っています。シューズであれば、日本人の足型に合わせて軽量で機能的な商品であったり、ポロシャツなどは、お客様から10年前の商品のボタンがほしいと問い合わせがあるほど、何度洗濯しても襟がへたらないなどの耐久性があったりします。だからこそ、売れ続けているのだと感謝しております。

よって、DUNLOP REFINEDはそういった今まで培ってきた商品の良さはそのままに、DUNLOPブランドの資産、提供したい価値といったものを融合し、作り上げたブランドです。

 

また、DUNLOPブランドは、スポーツ分野においてテニスを中心に投資を行い、ブランドの露出や価値向上をすすめていきます。

そのため、DUNLOP REFINEDは、テニスイメージをコアとしたスポーツカジュアルとして展開することで、DUNLOPブランドの一貫したイメージの訴求や、DUNLOPブランドとしての事業間の相乗効果をもたらしたいと考えています。

実際の商品は、2021年の春夏モデルから展開いたします。

 

-それは楽しみですね。日本は東京オリンピックの影響や健康ブームの影響もあってか、ここ数年スポーツブランドの引き合いが活発ですので、ダンロップスポーツにとっては追い風なのではないでしょうか。

そうですね。でも、今回のDUNLOP REFINEDの立ち上げは、決してブームに乗ろうと思ったわけでも、どんどんライセンスビジネスを拡大しようという思いがあったわけでもありません。我々のライセンスビジネスは過去から既存のライセンシーの皆様とパートナーとしてブランドを高めるための活動をおこなってきました。今後もそれは継続していきたいと考えています。

 

-このプロジェクト立ち上げに関して、ご苦労された点などはございますか?

DUNLOP REFINEDの立ち上げは、我々だけでなく、ライセンシーの皆様も共通に感じていた課題を解決するためです。

長年の活動の中で、DUNLOP MOTORSPORTブランドがどうあるべきか、どうありたいのかというものがはっきりと見えなくなってきてしまっていました。また商品がMOTORSPORTという名前と乖離していることも、課題だと感じていました。

変化を求める声は我々からも、ライセンシーの皆様からも結構長い間あったのですが、どこまで、またどう変化するかについてはなかなか結論がでませんでした。変化を恐れていたようにも感じています。

よって、ライセンシーの皆様と様々な話し合いを重ねて「変わる」という決断をすること、それの合意形成をすることが、一番難しい点でした。

「変わる」と決めたあとで、「じゃあ、DUNLOP REFINEDはこんなブランドにしよう」というのをライセンシーの皆様に説明したときに、共感してもらえたのは嬉しかったです。

DUNLOP REFINEDには、コアとしたテニスのイメージを色濃く受け継いだアクティブラインと、幅広い型に向けたベーシックラインと2つのラインナップを設定しています。

それに関しても、ライセンシーの皆様から、新しいいお客様に向けた企画ができる、2つのラインで色んな商品に挑戦したい、といったポジティブな声をいただけています。

今後、DUNLOP REFINEDブランドの商品が、例えば、外に出ようと思っていたら小雨が降ってきたときに、「この帽子があるからちょっと出かけよう」や、雪の日に「この靴があるから大丈夫」と日々の前向きなシーンを後押ししていくことを積み重ねることができたらいいなと思っています。

DUNLOP REFINEDは、日本中心の展開のみを考えていますが、ライセンスビジネスでダンロップブランドが提供する価値は同じです。安心、安全は基礎として、そのうえで、商品を使うことで気持ちが上向くような、上質で快適な機能がある商品を、幅広い方にご提供したいです。また、スポーツビジネスからの拡張の商品は、テニスをコアとしていくのは、世界中で共通です。

 

-これからのダンロップのライセンスビジネスに期待しています。

最後に、Licensing Internationalメンバーとして、どのように活用されているかなど、お聞かせ願えますか?

いろいろと活用させていただいているのですが、たとえば私達の部署で上司も含め3名が、CLSを受講し無事に卒業いたしました。ライセンスビジネスの専門部署として、プロとして取り組むためにも、CLSのようなしっかりとした制度があるなら、きちんと学んでみよう、資格があるなら挑戦してみようと受講をしました。内容としては、基本的なことが中心で理解しやすかったのですが、英語での論文提出は、初めての経験で少し苦労をしました。ライセンスビジネスの全体を俯瞰し、しっかりとした知識が得られること、また最後に提出する論文がケーススタディなので、この場合に自分だったらどんな手を打つのかという考察がしっかりできるいい機会になると思います。ライセンスに携わる方には、ぜひおすすめしたいですね。仕事との両立は大変なこともありますが、半年程度で修了しますので、両立可能だと思います。とはいえ、私はラスベガスで行われた修了式までの提出は間に合わず、夏休みを使ってなんとか仕上げて提出しました。

またその他のLicensing Internationalの国内の活動については、コロナウィルス対策のために密をさけるようになり、従来のセミナーがオンラインにかわりましたので、東京までの距離を気にせず、より気軽に参加できるようになりました。

部署の他のメンバーも「これはためになりそうだから参加してみよう」と気になったものに楽しく参加させていただいています。これからも色々な機会を期待しています。

 

-ありがとうございました。Licensing Internationalもうまく活用していただき、うれしく思います。
世界中のダンロップスポーツのブランドライセンスの発展と、日本での新ブランド 「DUNLOP REFINED」の成功を心から願っています。

 

小村幸子 氏 略歴
住友ゴム工業株式会社
ライセンスビジネス部 課長

 

2005年:住友ゴム工業株式会社に、新卒で入社。
                  スポーツ事業に配属。(SRIスポーツ株式会社(のちにダンロップスポーツ株式会社となる)へ転籍)
                 入社当初から、ライセンスビジネスを担当。

2010年~2012年:ゴルフの海外事業を担当。(ライセンスビジネスから離れる)

2013年~2017年:ライセンスビジネスを担当。

2017年:ダンロップインターナショナル株式会社(住友ゴムの当時子会社)がDUNLOPの世界的な権利を買収。
                 ダンロップスポーツで実施していたライセンスビジネスを引き続き担当しつつ、
                 ダンロップインターナショナルにて引き継いだDUNLOPのライセンス契約の運営基盤を構築、実行。

2018年:ダンロップスポーツと、ダンロップインターナショナルが、住友ゴムに吸収合併され、
                  住友ゴムにライセンスビジネス部が新設される。2社で別々に行っていた、ライセンスビジネスを統合、運営。

2019年:2018-19 COURSEWORK IN LICENSING STUDIES完了

2020年:国内のライセンスメインブランドとして、DUNLOP REFINEDブランドを立ち上げ

 


聞き手: 田中香織 Licensing International Japan ゼネラルマネージャー

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